《第267話》『守り守られ守り合い』
「ダメだよ呉葉――これ以上は、本当に呉葉の立場が悪くなっちゃう。それは、君自身分かってることだよね……?」
「っ、それはそうだが、アイツは夜貴を愚弄して――ッ」
「うん、ありがとう」
僕は苦笑しながら呉葉の頭に手を添える。全く、こんな小柄な身体のどこにこれほどの力を持っていると言うのか。
「でも、僕だって呉葉を悪く言われれば嫌な気持ちになる。だけどね、そこはまた呉葉と同じように、僕は僕自身のことをどんな風に言われたって、大して気にならないんだ」
「む、ぅ――だ、だが……ッ、――っ」
なんだかんだ、彼女は聡くもある。これ以上は、己の自分勝手で怒り狂っていることになる、と言うことも理解しているのだろう。
怒るな、とは言わない。僕のことを想った故に、周囲に影響を与える程憤ったことにも、幸せを覚える。
けれども、僕も彼女を守りたい。
「――分かった」
「うん、よくできました」
「こ、子ども扱いしおって!」
「こんなに小さいもんね」
「やかましい! 妾からしてみればお前の方が子供みたいなものだっ!」
「年齢だけね」
「ええいっ、ああ言えばこう言う! もう知らんっ」
呉葉を纏っていた重く焼けつくような雰囲気が霧散する。
――さて、と。後は、
「カオルさん。申し訳ないけど、このことは内密にしてね?」




