《第261話》『現実と虚構の差異』
創作世界の話ならよくある話。だけど、私にとっては忌むべき話。
私がまだ、十にも満たない年のころだ。
当時の私はまだまだやんちゃ盛りで、親にも周りの人にもしょっちゅう迷惑をかけては笑っていた。無邪気で、気楽で。この世の裏に潜む影など知りもしない。
そんな、何気ない日常を楽しんでいたある日、私は天涯孤独の身となった。
突如として現れた、二頭の犬の首と人間の上半身を持つ化け物。それは現れるなり、私の両親をまるで試食コーナーの揚げ物のごとく簡単に拾い上げて言ってしまった。
突如として奪われた日常だったが、悲劇とは連鎖するモノらしく、当時親を亡くした私の心の支えであった友人を、今度は影の化け物に奪われた。
私の人生は、怪物や妖怪と言った、闇に潜む者共に狂わされてしまったのだ。
十年弱経った今では、彼らの顔の記憶も大いに薄れてしまい、確かに聞いたはずの声も、果たしてどんな声色だったか、思いだすことができない。
創作世界にて、近しい者を失うと言うのは、よくある話だ。
だが、あのような汚らわしい者共に刈り取られてしまうと言うのは、何度もあってはならない話である。あんな死に方、人の死に方ではない。
故に、私は「平和維持継続室」の勧誘を二つ返事で受けた。全ては、この世の不幸のタネを、全て焼き払うために。




