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《第255話》『仕様』
「何? ステータスがカンスト? いつの時代の話だ?」
すると、電話の向こうの夜貴から文句めいた声が返ってくる。まあ、アイツがゲームの話題を出すことなどないからな、妾の聞き間違いだろう。
「ふむ――なるほど、それは……頭を抱えたくなるな――」
事務所に、妾の消えなかった幻影が現れたらしい。以前ならともかく、今の状況で現れたのは、例の新人とやらはかなり好戦的のようだからな。
だが、それであの幻影が敗れるとは思えない。むしろその逆で、変に刺激した結果とてつもない事態を招かないとも限らない。
何せあれは、以前の妾を夜貴のイメージで投影したものだからだ。どれだけ丸くなったように見えたとしても、何をきっかけに暴れ出すか分かったモノではない。
「わかった、待っておれ。すぐに妾も行く」
電話の向こうからまた何か叫ぶ声が聞こえてきたが、きっとすぐ来てくれと言う旨の懇願だろう。そこまで頼られたならば、気合を入れねばな。
さて、そうと決まれば変装だ。




