《第247話》『天敵と抗う者、時々爆発』
「オウオウオウオウオウオウオウ! そんなんだからテメェはいつも長いんだ!」
「お前こそいつもムダにふかふかしやがって、そんなんでオイシイ想いできるとおもってんじゃねーぞ!」
僕とカオルさんは、山奥のその場所へと足を踏み入れる。すると、案の定いつもの二人、スキンヘッドの大男と毛皮のコートを着たやせ形長身の男が言い争っていた。
「あれは?」
「今は人間の姿だけど、マングースとハブの妖怪だね」
「なんとなく奇妙な語感ではありませんか?」
「事実なんだからそう言われても――。それはともかく、今日はあの二人を止めよう」
「イオナズンですね?」
「そんな物騒なことは今日はしないよ! 二人を宥めるんだよ!」
なお、この二匹。何度も何度も今日のように僕らにお世話になっていた。いつもいつもくだらないことで喧嘩をしては、周囲に迷惑をかけている。
誰かが怪我をすることこそないモノの、時には人間社会にまで繰り出し、これまた迷惑極まりない方法で勝負をするために、人間側としても毎度毎度止めないわけにはいかない。
ちなみに、この二人は人間に対しては特に何も思っていない様子。基本的には無害なんだけどなぁ。
「ちょっとちょっと、今日はどうして喧嘩なんかを?」
「あァッ!? ――なんだ、てめぇか。なんか今日はオマケもいるみてぇだが、そいつも聞いてくれよ」
「おいコラ蛇ヤロウコラ、何俺が悪いことをした見てぇなノリで話し始めてんだコラ」
「俺が悪いわけねぇだろうが毛むくじゃらヤロウ!」
「んだとテメコラニョロニョロコラ!」
「もーっ! やめてって!」
コラコラうるさくて理由すらも、なかなか聞くことができないのはいつものこと。毎度毎度、スタートラインに立つことすら苦労するんだよなぁ。
「埒があきませんね」
「一度火が付くとなかなか消えないんだよ――」
「分かりました。イオナズン」
「えっ」
――山肌が吹き飛んだ。




