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《第227話》『たとえ一時でも』
「おとん、どうなったべか――?」
「眠ったよ。今はぐっすりだ」
アタシは狼山や遊仕込みの変装を解いて(と言っても、かつらだったり簡単な化粧だったりくらいしかしていないのだが)ふうりの待つ部屋へと戻る。
「正直、白徳利やアンタには悪いと思ってるよ。かあちゃん語ったりしてさ」
「いんや、おとんにとっては、きっと幸せな夢になったと思うべ」
「しっかし、まあ――あの様子だとアタシにまとわりついてきた時は本当は奥さんじゃないって分かってて飛び込んできてたんだろうね」
「うう、おとん――」
ふうりは引き釣り笑いをしながら、隣の部屋の扉を見た。だけれど、仕方ないなという様子が見て取れる。本気で呆れたわけではないようだ。
「起きたらきっと、酔いもそれなりには覚めてるだろうさ。当分頭は痛いだろうがね。ま、頑張んなよ」
「んむ!」
あたしはふうりの頭を撫でて、その場をクールに去った。誰かを助けるって言うのは、やっぱりいい気分なもんだね。
――あ、花見……。




