《第224話》『タヌキはしがみ付く夢を見る』
「かーちゃん! 懐かしいべ! い、いったいこ、これはぁ――ひっく」
「だっ、から、アタシはアンタのかーちゃんじゃないってのっ! と言うかどっちの意味だい!? 親でも奥さんでもないよ!」
「うおぉ~ん! うおぉ~ん!」
乗っていたちゃぶ台を蹴飛ばしつつ、泣きながら縋りついてくる白徳利。アタシは引きはがそうと試みるが、案外力が強くてそれができない。
「うぉお~ん! おまえが居なくなってからと言うもの、なんもかんもうまくいかないんだべぇ~! うぉ~ん!」
「アンタの責任だろ知らないよっ! ぎゃにゃっ!? こ、このぉ――ッ!」
「がふっ!?」
思わず手が出てしまった。酔っぱらいすぎだぞこのオヤジ! アタシの胸に顔うずめたりしやがって!
「か、かーちゃん、な、何するだァ――!」
「だからアタシはアンタの家内なんかじゃないよ! よく見なって!」
「ん、あ~?」
「分かったかい!? アタシはクラウディア! クラウディア・ネロフィ! 以前居酒屋でアンタの隣で飲んでたヤツだよ!」
「あ~? あー……」
とりあえず、少しは意識を取り戻してもらわねば話が進まない。一発喝を入れてやったんだ、これで――、
「かーちゃんも、一緒に飲むべ~?」
――駄目だこりゃ。




