《第223話》『タヌキのオヤジ』
「おとん!」
「おぅ~、おぅ~、帰っただべかふうりぃ~」
タヌキ幼女と共に部屋へと入ると、そのふうりとは異なりまんま太った二足歩行のタヌキが、ちゃぶ台の上で飲んだくれていた。前ではない。上で。何故だ。
更に部屋には空の酒瓶やらビール缶やらが散乱し、アルコールのニオイが立ち込めている。はっきり言って、自棄酒した時のアタシの部屋と全く同じ有様である。
「おとん! もういい加減飲むのはやめるべよ!」
「うぃ? ささっ、お前もわしと共に飲むっぺよふうり!」
「おおお、おとん! おらはまだ未成年だっぺ! と言うかそれ空ビン!」
「安心せい! わしらは妖怪、法律も中身のあるナシも関係ないべ! ひっく」
しまいにゃ、ふうりを捕まえて半ば無理やり勧めようとする。暴力的な様子こそないが、明らかに嫌がっているのがまるわかりだ。
「やめな!」
アタシは、見るに見かねてそう声を張り上げた。飲みたくもない奴に酒を飲ませようとするなど、酒飲みの恥だと考えているアタシは、このタヌキ親父を一喝する。
――すると、
「ん~? ぅう~ん――……? ――ッッ!!?」
アタシの存在に気が付いたらしいそいつは、それはもう分かりやすく泥酔しな目でアタシを見る。
だが、それもつかの間、まるで雷にでも打たれたようにその丸い目がなおさら大きく見開いた。
「――かーちゃん!?」
「はぁ!?」




