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《第221話》『酒!』
「白徳利は、お前のせいですっかり飲んだくれ親父と化したんだべ!」
「――は?」
アタシは、それこそ覚えの――あっ、
「白徳利――タヌキ……まさか」
「よーやく思いだしたっぺか! 先日、仕事帰りのおとんを酔っぱらったお前が強引に引きずり回して居酒屋をはしごし、そしてお酒の魔力に取りつかれちまって――! それからというもの、働きもせず酒ばっかり浴びるように飲んで!」
言われなければ思いだせぬほどおぼろげながら、その時の記憶もないこともない。確か、あの時はアタシも仕事帰りで――。
「ま、待て待て、なんでそれで飲んだくれになるんだい?」
「おとんはその時十年余りの禁酒中だったんだべ!」
「あー……」
禁酒明けの酒がどれほど美味か、それはアタシがよぉく知ってる。アタシも、一日の禁酒だけで次の日はそれこそ浴びるように酒を飲んだものだ。
それを白徳利は十年。その直後に飲む酒。――それはもはや、如何なる悪魔の誘惑よりも甘美な呪いだろう。
「――分かった、アタシが何とかしよう」
なるほど確かに、そいつはアタシの責任だ。




