《第220話》『考えなしに見えて、割と計算して破壊している。嘘ではないぞ?』
「はらほれひろはれぇ~……」
「見つけた! よかった、無事だ!」
「アタシ達は無事じゃないよ!」
と言うか、コーハイも無事でなくなる可能性もあったのではなかろうか。冷静に見えて、とんでもなく焦っていたのがよく分かる。勘弁してほしい。
少し遅れて、瓦礫の中から皆這いだしてくる。この全壊具合で、よく無事だったと喜ばしい気持ちでいっぱいだ。掃除のおばちゃんも全くの無傷のようだ。
「――さて、」
アタシはノびているタヌキ幼女を拾い上げる。
「おーい、大丈夫かー?」
「うぅ~ん――……ハッ!? 離せっ!」
タヌキ幼女はアタシの腕にアクロバティックなキックをかますと、突き立っている大きな瓦礫へと身を隠した。
「とりあえず、アンタから見りゃアタシは加害者で、しかもそれを覚えてないと来れば腹も立つかもしれない。けど、分かっていない相手に訴えたところで、虚しいとは思わないかい?」
「…………」
タヌキ幼女はじっとこちらを見つめてくる。その黒い瞳の奥で何を考えているか、その心を推し量ることは出来ない。
だが、やがて――、
「おらのおとん、おとん、白徳利は――」
その可愛らしい口が、言葉を紡ぎ始めた。




