《第二十一話》『お家デート』
「ほけぇ~~……」
「呉葉ぁ~、元気出しなよ――ほら、お弁当おいしいよ?」
自宅で、呉葉が作った弁当をいただきながら、夜貴はその造り手を慰める。しかし、当の彼女はそんな言葉など聞こえていないかのようにため息をつくだけだった。
「そりゃあ、車が修理場送りになっちゃったのはとんだ災難だし、ワケの分からないまま泣き寝入りすることになっちゃったけど――」
「ほけぇ~~……」
「ダメだこりゃ――」
一切話を聞かない以上、自力で立ち直るのを待つしかない。僕はそう思い、様子を見ながらもお弁当の鮭に手をつけた。妙なセンスの生焼けなどと言うことはなく、程よく火が通り、これまた程よい塩気が白米のみのおにぎりを進ませる。
「――別に、」
そうしている間に、呉葉がぽつりと言葉を漏らす。
「別に、牙跳羅を修理することになったことだけが、嘆かわしいだけではない」
「もくもく――……?」
「確かに、牙跳羅が破壊されたことは悩ましいが、それだけでなく、今日のデートが中止になったことも、妾にとっては――はぁ……」
「呉葉――」
「…………」
「じゃあ今日は、お家デートにしようよ」
「お家、デート?」
「ま、まあ、ただ家で一緒にいるだけだし、そんな、普段と変わるわけでもないけど――」
呉葉は、顎に手を当てて考え始めた。何をそんなに考えることがあるのだろう、と思うが、きっと彼女は、納得してくれる。
「――ふっ、そう、だな。確かに、わざわざデートへと行かずとも、この時間からお前といられるということ自体珍しい。だから、確かにお家デートとしても機能する」
「うん、そうだよ。どこか遊びに行くって言うことは、またできるし。今日は一緒に、家でゆっくりしようよ」
「――逆に言えば、貴様が毎日毎日土日祝日まで家を空けているということなのだが?」
「は、ははは――ご、ごめんね?」
「狂鬼姫と呼ばれた妾に対し、謝ってすむと思うなよ? 今日は、お前がぐったりするほどいちゃいちゃしてやるからな!」
「お、お手柔らかにお願いします――」




