《第218話》『復讐』
「くぅう、変化は完璧だったはずだべ――!」
「ふふん、この鬼神とまで呼ばれた妾をだまくらかそうとしてもそうはいかぬぞ?」
「流石呉葉ちん、アタシらにはわからなかったビミョーな気配の違いを――」
「妾の夜貴が、妾に対してあんな甘い態度をとれるわけが無いっ!」
「そっちかい!」
と言うか、言うほど甘くなかったような! 普段のコーハイは、呉葉ちん相手にどんな態度なんだろう!
「――まあ、呉葉ちんがほんの微細な違いでもコーハイと偽物を見分けられるのは分かったけど、それにしたって、今までまるで分らなかった」
「仕方あるまい。かように幼き姿をしておるが、その技術は本物のようだからな偽物を演じていたにもかかわらず。――さて、」
「ひにゃっ!?」
「ちょっ、呉葉ちん!?」
呉葉ちんは明らかに不愉快そうな顔で、タヌキ娘の襟首を掴みあげた。いかに小柄な呉葉ちんとはいえ、幼女よりは明らかに大きい。足がぶらぶらと宙に浮く。
――こりゃあ、コーハイに化けてたことに大層ご立腹ですわ。
「貴様はどこの誰だ? ここへ何をしに来た? 何より、妾の夜貴は無事なのだろうな?」
「そそそそそそそれれれれれれれれわわわわわわわわわわわわわわわわわわわッッ!!?」
「呉葉ちーん! 鬼の形相やめなー! 大人げないし超怖いからー!」
「――むぅ」
仕方無いな、と言うように手を離す呉葉ちん。タヌキの幼女は、怯えた小動物のごとく近くの机と隠れ、ちらりと顔をのぞかせる。
――怖がらせてもしょうがないので、アタシは屈んで目線を合わせることにする。
「――で、アンタは一体何モンなんだい?」
「お、おらは――っ!」
びっと、アタシは指さされた。
「お、おらの名はふうり! 赤毛のお前にふたと見られぬ姿にされた父・白徳利の娘だべ!」




