《第212話》『なお、ネズミは好きでも嫌いでもない模様』
「くれえもん! 花見に行きたいよ!」
「妾はどら焼きは好きだが、四次元に通ずる不思議なポケットは持ってはおらぬぞディア太君」
その後に、「まあ、似たようなモノは作れるが」と呉葉ちんは笑う。その笑みは、今のアタシにとっては某ネコ型ロボットのそれと等しく頼もしかった。
「く、呉葉――なんでここに?」
「ディアから電話があったのだ」
「先輩――」
「ひゅーっ、ひゅーっ」
「下手くそな口笛ですね! 電話かかってきたというのは嘘ですね!?」
くそう、流石にバレた。が、呉葉ちんが来たからにはそれはあまり関係が無い。
「――ところで、電話があったって、呼び出されたの?」
「いや、用事があるようではあったが、それを聞くことができなかったのだ」
「どうして?」
「…………」
「???」
「――カサカサ走る虫が突然こちらへ飛んで来て驚いて握りつぶしてしまった」
「呉葉――」
「ううっ、すまぬ」
うわ、鬼神相手でも怒るんだねぇ。そこはちょっと見直し――、
「――まあ、仕方ないよ。そんな状況ならさ。今度また、新しい携帯買いに行こう」
「うむ――すまないな、以後、あのようなことは無いよう努める」
「アタシ相手とあからさまに態度違わくないかい!?」




