《第207話》『この熱いハートを止める術をアタシは知らない』
「そんなことより、今日も書類溜まってるんですから、早く机についてくださいよ」
「む、むむぅ、コーハイぃ――!」
前々から思っていたのだが、嫁さんはノリと勢いで行動するタイプなのに、この樹那佐 夜貴というコーハイはまるで正反対なような気がする。何故それ程性格が異なってうまくいっているのか、純水に疑問だ。
「溜まってるつっても、今日の分減らして明日がんばりゃ、充分片づけられるんだろ? 火急ってわけでもないしさ」
「書類の何パーセントが、ディア先輩のせいでしたっけ?」
「カエスコトバモゴザイマセン!」
くぅ! 確かに、燃やしすぎて要らない被害でたけどさ! 始末書の方は一応書いたし、根を詰めすぎちゃ終わる仕事も終わらないってモンじゃないか! アタシは、こんな暗い事務所なんて望んでない!
「ディア、そう焦んなよ。花はまだまだ散らないだろ? ――うおっ、何だこの書類虹色じゃねぇか!? しかも蛍光ペンのインク跡って……遊ゥううううッッ!!」
狼山、アンタはそう言うけどさ! 桜ってのは、酒ってのは、欲求が出た時に楽しむのが一番なんだ! だから、アタシは今見たいんだよ!
――くそう、意地でもこの事務所の空気を花見に持って行ってやる!




