《第二百四話》『終わりよければね。うん、終わりよければ』
まあ、そんなワケで。何やかんやと忙しかったけども、実に平和的に僕らの旅行は終わりを告げた。
相変わらず呉葉と鳴狐は敵対関係だけども、それでも二人の関係が、ただの険悪なモノではなく、腐れ縁的な一言では言い表せない何かであることを知れたのは本当によかった。
これは僕の勝手な思い込みかもしれないが、二人が互いに意識し合っている限り、大きな事件が起こることは滅多にないような気もするのだ。これもまた、一言では言い表せない何かであるのだが。
「さて、帰るとしようか夜貴」
「あ、安全運転、で、ね?」
「ほう、未来の妾はなかなかによい車に乗っているのだな」
「ふふん、どうだ? 素晴らしかろう?」
「しかし経済事情は大丈夫か? 確かその車、一千五百――」
「黙ってろ偽物ッッ!!」
「フン! いかにも貴様らしいのう! まるで貴様のちみっこい身体をごまかすかのように大きいくるまじゃ!」
「ほう? 旅行は終わったからな、喧嘩なら買うぞ九尾の狐?」
「ほらほら、君もすぐに喧嘩腰にならない。それじゃあね、皆」
「フン!」
「この次もまた、よろしくで候」
「喧嘩するなよ? もっとも、お前たちにはあまり心配するようなことはなさそうだが」
僕らは見送られながら、狂鬼姫の旅館を後にする。嫌な予感もしたりしたが、終わり良ければ全て良し。来てよかった。本当にそう思える。
――その後、呉葉の車は交通事故に巻き込まれた。




