《第二百一話》『彼女は彼女の道を行く』
「ふっ、久しいな。未来の妾の夫よ」
「夫――って、え? 嘘!? もしかして君は……」
消えたと思っていた。あれから少し経ったがその様子は相変わらずで、どこか畏怖を纏っているのもまたあの時のまま。
だが、その一方で「最初に」会った時と比べると、どこか柔らかくなったような気がするその雰囲気。それでも間違いない、彼女は――、
「うむ、その通りだ。お前の頭より引きだされた、祝言を上げる前の『狂鬼姫・呉葉』、だ」
穹島先生の物理幻術によって生み出され、しかし本来ならとっくに消えているはずの幻影呉葉だった。
「一体どう言うことなのか分からぬが、要するにアレは、狂鬼姫の紛い物と言うことでいいのかえ?」
「紛い物とは、言ってくれるな九尾の狐? ヤツの言った通り、本来なら消滅しているはずの妾だが――今ここにこうしていられるのは、本来の力の大きさにあり、それでこの存在を保って要られるからにある」
「フン! 偽物は偽物に変わりない! で、そんな偽物が、余や本物に一体どんな目的があってこのようなややこしいことをしたと言うのじゃ?」
「知りたいか?」
「偽物にもかかわらず、ヤツと同じく地味に苛立つ言い方をするでないわ! はよう言わぬかえ!」
すると、狂鬼姫はクックックと笑った。その笑みは、現在の呉葉よりも倍増しで挑発的だ。
「妾が貴様らにこのような行為を働いたその理由。それは――」
「――っ!」
「当然、ただの暇つぶしだッ!!」




