《第百九十九話》『起こったこと、その正体』
「まず、状況を整理しようよ」
「余も今そう言おうとしたところじゃ。よって、それは余の案となるのじゃ」
「整理するだけに案も何もないと思うけど――」
「とりあえず、じゃ。このような場所に立たされる直前まで、余はウキウキ気分で山を登っておった。すると突然、侍渺茫や狂鬼姫と離され、人間なぞと共に時を過ごすことになってしもうた。本当に突然のことで、何も感じなかったのう」
「僕が人間って言うだけで辛辣過ぎない!?」
「人間なぞ所詮はその程度、いうなれば味噌っかすみたいなものじゃからな。節分の時の雪辱、余は忘れておらぬぞえ?」
「アレは主に呉葉のせいだよ! ――ええっと、僕も同じような感じで、呉葉と並んで山を登っていた、だけかな」
一応、呉葉の企みは伏せておく。多分関係ないし。
「整理した結果、ますますわからなくなったのじゃ」
「本当に突然だったからね――ううん、どうしよう。本当に、何も違和感は感じないの?」
「こうして探ってみてはいるが、どうにも余らに術をかけられた様子は感じられぬ。――いや、形跡自体は微量に残ってはおるようじゃが」
「えっ、あったの!?」
「あると言っても、余らに直接影響を及ぼした様子はないのじゃ。もし異空間なら周囲全て、飛ばされたのなら余らにあるはずじゃろう?」
「残ってるって、どんな感じ?」
「まあ、奇妙と言えば奇妙じゃが――そうじゃな、周囲の地面に点々と、と言ったところじゃろうか?」
「――っ!」
僕はようやく、自分達の身に起こったことを理解した。
「飛ばされたのは僕らじゃない、呉葉達だよ!」




