《第一話》『僕のお嫁さんは鬼!』
「おお、帰ったか夜貴! さて、定番だが――食事にするか? それとも風呂にするか? それとも、わ・ら・わ?」
「うーん、呉葉かな?」
家に上がると、僕の新妻が柔らかな笑顔で迎えてくれる。
膝裏まで届くほどの白い髪に、切れ長の赤い瞳。肌は透き通るように白く、頬は紅をさしたように赤みが差した、誰もが二度見するような女性! いや、やや小柄な体格を考えれば、美少女と言ったほうがしっくりするような、僕の奥さん!
「よかろう、ならばただいまのキスと言う奴だ。……――ん」
白色のワンピースを着ていることから、その少女性はやたらに強調されるけど、その上から着用しているピンク色のエプロンは、僕を常にそばで支えてくれる愛しいヒトのトレードマーク! ――だけど、躊躇なしにキスされるもんだから、いつもドキドキする。
「いつも変わらずウブな奴め。だが、そんな姿も愛おしい」
「も、もう――! ちなみに、お風呂は沸いてたりするの?」
「沸いているわけが無かろう。妾は夕食をしていたのだからな!」
「だよねー……」
「代わりに、今日は自信作だ。期待するといい。――それとも、突然の猛吹雪にでも見舞われたりしたか? ならば、今から大急ぎで沸かすが……」
「ううん、大丈夫だよ。そんな凍えそうな状況に見舞われたりはしてないからね」
「まあ、こんな真夏に雪女など出るまいからな」
気立てもよく、それでいてとても優しくしてくれる。話していても楽しいし、こんな女性を奥さんに迎えられた僕は、この世の誰よりも幸せな自信がある。
「配膳、僕も手伝うよ」
「ああ、頼む」
「まずはお椀を出しましてぇ~♪ ――っ!?」
ただ、彼女は――、
「うわっ、ゴキブ――、」
「ふんぬっ!!」
ドバキャァッッ!!!
――今おたまの持ち手をゴ○ブリごと壁に貫通させた腕力の通り、正真正銘の鬼だったりする。