《第百九十八話》『少しだけ、少しだけの』
「だ、誰があんなちんちくりん鬼神などと仲がいいのじゃっ!?」
「テ、テンプレ返答ありがとう――」
「あいつは自分勝手で独断専行ばかりで、しかも無駄に威張り散らし、自分の非は認めようとせぬ!」
「呉葉は――うん、そうだよね……」
「しかも、それだからこそとも言うべきか、己がどれだけ苦しんでいたとしても、気が付こうとせぬ――全く、何とも腹立たしいヤツなのじゃ」
怒ったように言いながらも、どこかその言葉には親しみが混じっているように思えた。いうなれば、この九尾の狐――藤原 鳴狐は、呉葉の友人であろう。
そんな、互いに遠慮なくぶつかれる相手だからこそ、呉葉も殺生石を隠した。彼女が、間違いを犯さぬために。――そう言う関係は、少し羨ましい。
「フン――まあ、そんなあやつが、己にとっては忌まわしい思い出しかないはずの白髪を上端のネタに使うことさえ出来ているのだ。お主こそ、それはそれで対したものであると、少しだけ認めざるを得ん様じゃ」
「…………」
「どうした? 口をあけっぱなしにしておると、虫が入るぞえ?」
「人間、嫌いなんでしょ――?」
「当然だとも。じゃが、それでも否定しようのないモノまで意地を張り通すつもりはない」
鳴狐はそう言うと、九つの尻尾をぶわりと動かし始めた。
「こんなところで油売っているのも馬鹿らしい。とっとと原因を探り当て、脱出するとしようぞ、人間」
「樹那佐 夜貴、だよ」
「フン、誰が人間の名など覚えてやるモノか。そんな事よりも、余を手伝うのじゃ」




