《第百九十話》『のんびり旅行が終わるとき』
「旅グ○メによると、ここのうどん屋はこのあたりに来たら絶対に食べなければ損なのだそうだ」
「ほうほう、こう言ううまいもの情報であると、大概はらぁめんが話題に上がってくると思ったのじゃがのう?」
「誰も貴様には言っておらん。どうだ夜貴?」
「――うん、いいかも。どんなうどん?」
「ふむ、シンプルさをつき詰めたものでありながら、一度食べたらほかのうどんが食べられなくなるほど、とここには書かれている」
呉葉はスマホで情報を読みつつ、画面をこちらへと見せてくる。確かに、写真を見る限りだと普通の素うどんにしか見えない。
「狂鬼姫、どうでもいいが、よくそんな細かい文字を読もうと思うのう――」
「老眼狐が無理をするものではないぞ」
「誰が老眼じゃ年齢詐称幼児体型!」
「昨日もそうだが、他者の身体的特徴をあげつらい罵倒するのは、下劣というほかないぞ? もっとも、貴様に品性と言うモノを期待する方が覆いに間違っていると思っているが」
「かく言う貴様は憶測による罵倒じゃろうが! いや、もはや憶測ですらないじゃろう! 貴様こそ、下賤以外の何者でもないじゃろうが!」
「なにおう!」
「なんじゃ!」
「ふ、二人とも、こんな街のど真ん中で争わないでよ――!」
「鳴狐様、尻尾! 尻尾が出てしまっているで候!」
――ゆっくり出来そうにないなぁ……。




