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《第百八十七話》『とは言いつつも、もし大参事になってたらどうなったんだろう?』
「ふ、二人とも大丈夫――?」
僕と呉葉に割り当てられた部屋で、机の前に正座しながら並ぶ呉葉と九尾の狐。双方ともに俯き、その顔色は青い。
「――夜貴、お前はあの女将が不気味で恐ろしいと言っておったな?」
「ほう狂鬼姫、こいつはそのようなことを言っておったのかえ? 笑えるのう――」
その乾いた笑いはなんですか、九尾の狐さん――?
「確かに、多少不気味ではあるかもしれぬ」
「だが、アレの恐ろしさはそんな生易しいモノではないのじゃ」
「妾達の腕を止めた時、それを確かに見た」
「あの時の奴の顔、それは――ああっ、今思いだしただけで寒気がするのじゃ……ッ」
い、いったい何を見たのだろう? 両者とも大妖怪であるはずなのに、そんな二人がこんな風に並んで仲良くうなだれてるなんて。
「と、とりあえず、そんなに怖い目に合ったのなら一旦休戦したらどうかな――?」
「ぐぬぅ、異論なし――」
「余も異論なしじゃ――」
こうして、その日二人の大妖怪はそれぞれの部屋で眠りについた。
まあなんにせよ、大騒ぎにならなかったからよかったよ――。




