《第百八十一話》『You are shock!!』
「まあ、指先一つで」
「今日の適当臭は特にひどくない!?」
僕らの目の前には、雪男があおむけに倒れて目をまわしていた。
……一応簡単に言うと、文字通り指先一本ででこぴんで呉葉がフッ飛ばした。自分の嫁ながら、相変わらず何と無茶苦茶で破天荒なんだろう。
「しかし、よもやハイキングコースで雪男が出没するとはな」
「――本部に連絡したほうがいいかな、コレ」
「別にその必要はなかろう。そう悪い奴でもないようだしな」
「なんで分かるの?」
「妾、さっきハンカチを落としてしまった」
「え、そうなの?」
「それをこいつが持っている。すなわち、拾って持ってきてくれたのだな。うむ」
「そんな親切な雪男にでこぴんしたの!?」
流石に、これは雪男に同情せざるを得ない。そりゃまあ、登場の仕方が悪かった可能性があるが。
でもまあ、きっと咄嗟にやっちゃったのだろうから、ある程度は――、
「全く、落とし物を届けるのならば旅館にしてほしいモノだ。折角、夜貴と二人っきりだったというのに」
「――あれ? もしかして、割とすぐにハンカチを届けに着たことに気が付いて……?」
「ああ!」
「酷い! かつてここまで酷い仇返しがあっただろうか!」
「そうは言うが、雪男だぞ?」
「え、それが――どうかしたの?」
「…………」
「――?」
「夜貴はホント、むっつりスケベだな?」
「!?」
そう言って、呉葉は僕のことを軽蔑するような目で見てきた。
――かつて雪男との間に何があったんだよ!?




