《第百七十三話》『デジャヴ』
「安全運転で頼むよ――? くれぐれも!」
「分かっている。分かっているとも。今度こそ、こ奴を傷つけたりはせぬ」
呉葉は僕に言うと言うよりはまるで自分に言い聞かせるようにそう言った。はっきり言って、修理代が馬鹿になるわけでもなく、危険である代わりにお給料のいい仕事であっても、こう何度も事故を起こされると厳しい。と言うか、修理代ってこんなに高かったんだね。
「――何だったら、電車でもよかったのに」
「確かに、それはそれでおつなモノだろう。が、車がある以上、積極的に使わなければな」
「なるほど――って、それは納得できる理由とはまた違う気がする……」
「夜貴のくせに生意気だ!」
「唐突なのび太君扱い!?」
そんな風に話している間に、車は高速道路へ。運転は実にスムーズで、相変わらず乗り心地に関してのみを言えばとても安心感がある。
「ほうれ、妾は合流だって余裕で出来てしまうぞ」
「最初から心配してないよ。なんだかんだで、運転上手だからね」
「ふむ、運転が上手、か。では、今回も張り切っていくとしよう」
「――え? ……ッ!?」
僕の身体が、強烈な加速による慣性のかかりでシートに強く押し付けられた。
「もはや妾の前を阻む車など、道端の障害物にすぎぬ」
「また!? リアルの運転でゲームみたいなことしないでよォ!?」




