《第百六十話》『トイレであると言う手がかり』
「で、あるならば。まずはトイレである意味を考えてみる必要性があるか」
呉葉は顎に手をやり、色々思索を巡らせているようだった。――と言っても、トイレでやることって、用を足す以外に無いんじゃ。
「はいはーい。トイレは吐くためにあると思うよー」
「アル中も、度を過ぎれば平時まで影響されてしまうようだな」
「平時じゃないよ、今も飲んでるさ!」
「大威張りで飲酒発言しないでください仕事中ですよ!?」
「なあに、大丈夫大丈夫。自動的に目の前の人間が分身の術を使わない限りは」
そう言う彼女はどこか酒臭かった。大分飲んでるんじゃ――。
「一つ、事件に関連しそうな使い方、なのですが――」
「むん? 誰だお前は。新入りか?」
「所長です! ええっと、それでですね。使い方なんですけど――何らかの行為を隠すため、と言うのはどうでしょうか?」
「ふむ――?」
「古今東西、トイレと言うモノはイカガワシイ行為や素行の悪い少年のよろしくない場所として使われるモノです。爆弾を置かれたりする場所にも、上がることがあります」
「…………」
「――なんですか?」
「妙に詳しいな。お前が犯人ではないのか?」
「違いますよ!? いくら存在感が薄いからと言って、こんなことで目立ちたくはありませんよ!?」
確定するには証拠不十分だけど――うん、このヒトは違う気がする。
それにしても、何かを隠したい、か――。
「とすると、狼山はここで行われていた何かを目撃してしまったがゆえに、殺されてしまったと考えるのが妥当か」
「けど、それはそれとしてなんでチョコを持ってきているんだい?」
「アレだ。遊からもらったチョコが、どんな悪戯しかけてあるか分かったモノじゃないからトイレに流――いだだだだっ!? 冗談だ、冗談! 悪かった、今の冗談は流石に度が過ぎでた! いだだだだっ!」
呉葉、今日は遊ちゃんによく足を踏まれるなあ。




