《第百五十話》『なお、創業150年だそうです』
「むん? おお? 狂鬼姫、どうやら体調を崩して居るようじゃなぁ?」
「鳴狐……一応、鍵はかけておいたのじゃがな――?」
「普通に壊して入って来たんじゃ――?」
「ああ、表の扉なら部下である専門の鍵開け士にあけさせた。くふふ、相変わらず扉に傷も証拠もない完璧な仕事っぷりよ」
「お心遣いどーも――っ!」
とはいえ。この九尾の狐が呉葉にとってよくないことを考えているのは間違いない。そうとも、僕がしっかりしなければ、体調を崩している彼女を守れないのだ。
僕程度の力でどこまでできるか分からないけど、可能な限り全力を――、
「ふぅむ、しょうがない、な」
「――呉葉?」
「鳴狐、降参だ。この状態では抗うことなどできそうもない」
「ぬはははははっ! なるほど、余は随分と運がいいようじゃ! さあ、殺生石のありかを吐いてもらおうか!」
「い、いいの、呉葉――?」
「いいも悪いも、どうしようもなかろう?」
それは、そうなんだけど――ちょっとだけ、僕の力じゃどうあっても解決できないって言われてるみたいで、少し傷つく。
「では言うぞ、まさに言うぞ、耳かっぽじってよぉく聞くがいい――!」
「くははっ、ついに、ついに余の悲願が達成される!」
「――ここより少し東へ行ったところに、味噌を作っている工場があるのは知っているか?」
「――む? は? 味噌……?」
「その巨大な樽の底に、お前の望むモノは隠してある」
「…………」
「…………」
ちょ、ちょっと、殺生石は呉葉の作った疑似空間に――も、もしかして嘘をついて騙すの!? いや、でも、いくらなんでもこんなのには引っかからないんじゃ……。
「よし、味噌樽の底じゃな! 行くぞ、者共!」
あっさり騙されたー!?
「底の方に、味噌っかすが隠してある――と、もはや聞いてはおらんな」
「絶対今の部分を聞かせるつもり無かったよねぇ!?」




