《第百四十九話》『看病』
「うう、すまん――」
「まあ、なんと言うか――僕も気が付かなかったし……はい、あーん」
「あー……んむ」
呉葉のかわいらしい口に、僕はたまご粥を運んでやる。ベッドからだるそうに身体を起こしているが、そんな普段では見られない姿が少しだけ愛らしく思う。
「しかし、存外恥ずかしいモノだな。このように食べさせられるというのは」
「おいしい?」
「んむ。しかし、夜貴は料理できたのだな」
「本当に簡単なモノしかできないけど、ね。あーん」
「あー……んむ」
だけど、やっぱりいつもの元気な呉葉の方が、僕は好きだった。彼女は、むしろ「このまま看病され続けるのも悪くない」とか言っていたが、早期の回復を僕は望む。熱に浮かされる姿を見続けるのはあまり精神的によろしくない。
「ふぅむ、もっと食べたいのだがな」
「食欲があるってことは、大分回復へと向かっているのかな?」
「いつまでも豆粒ごときに苦しんでられん」
「もっと看病されていたかったんじゃ?」
「うーむ、こう世話をされているのはいいのだが、自由が利かないのはな。妾が求めているのは、もっと密着したイチャイチャなのだ」
「イチャイチャって――」
「うつりこそしないが、こう、あんなことやこんなことをだな――」
「もーっ、今は大人しくしててよ!」
「くははっ、そうだな。今は言われる通りにしておこう」
そう言う呉葉の少々熱っぽいからだを支えて、ベッドへと横たえる。きっと、この調子なら明日にはよくなっているはずだ。
――そんな、今はまだ安静にしているべき時であろうに、
「狂鬼姫ィ! 今日こそ、殺生石を取り替えしてもらうぞォ!」
どうして襲撃者なんて来るのかな!?




