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鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第五章
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《第百四十一話》『舌ったらずな怖いもの知らず』

「は、ん――っ! それが、どうしたというのじゃ……ッ」


 頭を押さえてよろめく九尾の狐。しかし、その目に滾る憎悪は消えてなどいなかった。


「余はその後がどうなろうと知ったことではない――! 例え母上が今の余を見てどう思おうとも、この怒りの炎を消すにはその道しかないのじゃ……ッ」

「くっ、この愚か者がァ――ッ!」


 呉葉は刀を捨て、九尾の狐へと飛び掛かっていった。彼女の本来の力を知っている僕なら分かる。本来、呉葉は刀なんて使わない。すなわち、武器の使用は、そもそも戦いにくいはずなのだ。

 ――もしかしたら、手加減していたのかもしれない。それだけ、呉葉にとってあの九尾の狐、藤原 鳴狐は、因縁のある相手だったのだろう。

 けど、それを捨てた。彼女にしか感じられない何かが、九尾の狐への諦めを作った。刀を手放したのは、多分そういう意味で――、


「ふむ、キミはあわれなほどうすっぺらだね」

「余の存在に文句を垂れるのはだれじゃ――っ!」


 幼げな声色でありながら、妙に尊大かつ理的な発言は、その場に大きな存在感を落とした。集まった視線の先の零坐さんの孫、二之前 イヴちゃんに。


「だってそうだろう? うらみをいだくこんげん、ははへのにんげんのうらぎりも、キミはかんけいないといった。うらみいかりといってみたはいいものの、けっきょくにんげんがきにいらないといって、あばれているだけ」

「何が言いたいガキが――! 童子の癖に、この余を愚弄するつもりかえ?」


 九尾の狐から、怒りを表すかのごとく黒き炎が立ち上り始める。しかし、それを受けてもイヴちゃんは涼しい顔をしていた。


「でもそのじったい。そのちすじをかさに、むだにごうまんなキミは、そのちすじだからこそドジであるじぶんをつくろいたくて、このようなことにおよんでいるのではないかね?」

「――っ!」


「けっきょくそれは、きみのきらうにんげんと、ほんしつてきなかんがえがたいさないということを、いみしているのだよ」


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