《百三十八話》『とおいかこのはなし』
《百三十八話》『とおいかこのはなし』
「ははうえっ! のりかががんばっているから、ごほうびをあげたいのじゃっ」
「ほう、ご褒美とな? ふぅむ――」
「なにがよいかのう? なにがよいかのう?」
「そうじゃなぁ――のう、であるならば、この唐より送られて来た菓子などをくれてやってはどうじゃろう?」
「ははうえっ、まじめにかんがえてくりゃれ! そしてそれはトウガラシじゃっ」
「くふふっ、奴が口にした瞬間、真っ赤になる顔が目に浮かぶ様じゃ」
「もーっ、ははうえーっ!」
「しかし、何故あやつに突然贈り物を?」
「うむ、きょう、よがそこでころんだとき、てあてをしてくれたのじゃっ! じゃから、こう、おかねをあげようとおもってのう」
「そ、それならば、やはり普通にお菓子のほうが良いのではないかえ?」
「どうしてじゃ?」
「お礼として、何かをあげるというのはよい。じゃがのう、お金というものは、ただモノの価値を決めるだけの単位じゃ。それで気持ちと言うのは、伝わりにくいと思うがのう?」
「うむむー、そういわれれば、そんなきもするのう」
「菓子以外にも、装飾品とか、そう言った何かでもよい。気持ちと言うモノは、そう言った『モノ』にこそ宿るのじゃ。――で、あるならば。賢いお主ならばわかるじゃろう?」
「うむ、わかったのじゃ! ではさっそく、このおうごんのくしをわたしてくるのじゃっ」
「それはそれで微妙にずれておるぞ――!」
「――? ふぅむ、でもこれでは、一人にしかあげられぬのう」
「む? 紀香だけではないのかえ?」
「んーとねー、みよしにー、ひろきちにー、さだひらにー、」
「ふふっ、お主は本当に皆が好きじゃな。人間は好きかえ?」
「うんっ! このなりこ、にんげんはだいすきじゃっ!」




