《第百三十五話》『一度落ち着きたい』
「――で、何がどうなって……、」
「…………」
僕と藍妃の目が合った。
「えっ、なんであんたがここに居るのよ!? 確かにあんたの担当エリアだけど、到着早すぎない?」
「き、藍妃こそ、なんでこんなところにいるんだよ!? 藍妃が担当している所属事務所は、もっと別の場所だったはずだろ!?」
藍妃は、呉葉が鬼であることと、僕と結婚していることの記憶を消されている。ああ、もう! どう説明すりゃいいの!? とんでもなくややこし――、
「何故って、夜貴は妾の夫だからに決まっているだろう!」
お願い呉葉、これ以上さらに状況をぐちゃぐちゃにしないで!?
「はぁ!? なんで夜貴があんたとけっこ、って、夜貴!? 結婚!?」
「ええっと、それは、その――!」
「ちょっと聞いてないわよ!? 何、いつの間にっ、あんたは私の――っ」
「夜貴は妾のだ!」
「ちょっと貴様ら、いい加減にせよ――っ!?」
「うっさいアンタは黙ってろ!」
「取り込み中だ、しばし待て駄狐!」
「駄っ――!? 言うにことかいてきさっ、ええい話を聞くのじゃっ!? くぅっ、侍渺茫―! 侍渺茫―!」
「は、はっ、鳴狐様――!」
この期に及んでまた一人増えた!
「な、鳴狐様、この状況で呼びつけられても打ち合わせの不意打ちなど到底――!」
「そんなことはどうでもよい! 彼奴等の口論を、何とかして止めてくるのじゃ!」
「いきなり何を仰って候!? 無茶にもほどがありますぞ!?」
「いいから命令じゃ! 痴情のもつれによる喧嘩なぞ余はかかわりとうない!」
「拙者にその役を押し付けないでいただき候!?」
「もーっ、何なんだよこれぇ!」
もはや、戦いどころではなくなってしまったようだった。どう収集つけるんだよこれ。




