《第百三十四話》『乱入者』
「殺生石――我が母の身体、返してもらうぞ狂鬼姫ッ!」
「返せと言われて、はいそうですかと行くものかッ!」
刀と剣が、強くぶつかり合った。重なり合った刃は火花を弾けさせ、ぶつかり砕けた力の塊は、周囲の大地と空気を震わせる。
「っ、相変わらずの化け物っぷりだな――!」
「はんっ、貴様は――弱くなったかのう?」
「っ!」
「はっ!」
九尾の狐が剣で払うと、呉葉は吹き飛ばされる。その際、モノのみごとに家の壁に当たって、それを突き破っていく。
「呉葉――!」
「夜貴――ッ、何故まだここに居る……ッ」
「一人放っておけるわけないじゃないか! と言うか、イヴちゃんが居座ろうと――」
「馬鹿――っ、そんなこと言ってる場合では、」
「そう言えば、狂鬼姫はその人間をどこか妙に大切にしていたな?」
「っ、夜貴!」
「――!!」
僕の元へと、巨大な火球が一つ降ってくる。恐竜が隕石による滅びを眺めていたとしたら、こんな光景だったろうか? 紅蓮の塊は、僕を焼き尽くさんと迫りくる。
――それを、
あわやと言うところで、突然目の前に現れた物体が遮った。
「――っ、何者じゃ!」
「近くを歩いていたら、何かとんでもないことになってたから――加勢するわよ」
「えっ――!?」
僕の振り向いた先――そこには、同期にともに訓練を受けていた、静波多 藍妃が立っていた。




