《第百三十三話》『危険だって言ってるのに!』
「零坐さん――!」
「――わたくしは狂鬼姫様のしもべであります。如何なことになろうとも、見守る義務があるのです」
「――っ、だけどあなたは……ッ」
「ですが」
零坐はぼーっと状況を眺めているイヴちゃんを抱えると、こちらを振り返った。
「それにこの子まで巻き込むつもりはありません。遠くに逃げましょう」
「零坐さん――!」
僕は、零坐さんはてっきり呉葉の言葉は聞かずに未だに縛られ続けていると思っていた。だけど、彼は彼なりに、己に課した使命を守りつつ、主の命令を実行しているのだ。
「――分かりました。じゃあ、僕はこの戦いをこの場で見届けます」
「とてつもなくいろんな意味で悔しいですが、呉葉様をお願いします」
零坐さんはそう言うと、走って家から脱出しようとした。
――それを、抱えられたイヴちゃんがしたチョップが思いっきり妨害した。
「はぎゃっ!?」
「ちょ、ちょっと、イヴちゃん!?」
逃げろと言われてて、まず間違いなく危険な状況なのに、それを他の誰でもないイヴちゃんが邪魔をした。
「イ、イヴ、何を――!?」
「そふ、とてもめずらしいたたかいがこれよりはじまるのだよ。じゃまをしないでもらいたい」




