《第百三十話》『どっちが悪いほうなのか、分かったモノじゃない』
「お、おにょれ、またしても――」
「え、えっと、大丈夫――です、か……?」
「ええい、誰がオキノドク九尾じゃ!」
「誰もそんな事言って無いよ!?」
尻もちついている半泣きの女性は、こちらを睨みあげてくる。――あれ。九本の尻尾? と言うか、今このヒト、自分のことを九尾って……?
「おお鳴狐よ、いつぶりだ? 百年は経っていると思うが」
「やかましい狂鬼姫! 殺生石を! 殺生石を返せ! 一体どこに隠したのじゃ!」
「まあまあ、そういきり立つでない。みかんでも食べるか?」
「いらん! そんなモノより、余に早く殺生石を――」
パンッ! と、呉葉が鬼の腕力でみかんを潰した。
「ふああっ!!?!? 目がァ、目があああああああああああああああッッ!?!?!?」
「ウケケケケケ、どうだ、沁みるだろう?」
みかんの果汁を顔面にひっかぶった九尾の狐は、両目を押さえてのたうち回った。
――何と言うか、僕がイメージしてた大妖狐とはちょっと、いや、かなり違うなぁ。
「な、鳴狐様今悲鳴が――ッ! き、貴様ら、我らが主に何と言うことを!?」
あ、増えた。
「くっ、この――! じゃが、余はどれだけの苦渋を舐めさせられようとも、屈しはしない!」
「ハッハッハッハッハ! その勢いやよし! だが、それで何とかなるほど世の中は甘くないということを教えてやろう!」
――何だろう。すごく九尾の狐の方を応援したくなる状況だ。




