《第百二十六話》『罠と来客と缶ビール』
「はぁ、ヒマだねぇ」
「ヒマ、ではありません。書類達はあなたのことを今か今かと待っていますよ――?」
アタシ、クラウディア・ネロフィは、今日も缶ビール片手に事務室の机の上に足をのせ、天井を見つめる。うん? 机の上の書類? HAHAHA、アタシの目は都合の悪いモノは映さないんだ。
「んなこと言ったってよぉショチョー、事務仕事ばっかり飽きたんだよ」
「せめて仕事中の飲酒はやめろよ!」
「アンタこそ、書類仕事より遊が今やろうとしていることを止めなよ!?」
ちらりと目を向けると、遊は流し台で一つのマグカップ相手に何事かを行っていた。あれ、コーハイのヤツじゃないか? ――アタシしーらないっ。
まあ要するに、今日のこの日はアタシも、狼山も外へ出るような仕事はなく、コーハイはコーハイで正月休みを呉葉ちんに延ばされ、要するに外へと出る用事など全くないのであった。
――そんな、ヒマで実に平和よろしくな事務所の今日、
「来てやったぞ、狂鬼――……ッ、」
知らない事務室に誰かが入ってくるなり、上から降ってきた小麦粉がバサバサバサーっと振りかかるトンデモ事態を目にしてしまった。アレ、遊の仕業だろう。アタシ、しーっらね。




