《第百二十二話》『封印』
「えっ、シュールストレミング?」
「うむ。恐ろしい悪臭を放つやつでな」
「――あの時は大変でしたよ。しかし何故台所で」
「仕方無かろう! あれほどにまでとは思わなかったのだ! ともかく、あのあまりにも臭いのヒドイそれを、臭気が漂うなり無理と判断し、床下を引っぺがして結界で封じたのだ。あそこで封じているモノはいくつかあるが、あれが一番厳重にしてあったはずだ。――ああ嫌だ! 思いだしたくない!」
「鬼神が臭いで怯んでる――」
「ファブ○ーズで除霊ができる時代なのだ。臭いが効果を持つのは不思議ではなかろう?」
腐っても鬼神である呉葉が、これほどにまで恐ろしいことを実感込めて言うなんて。シュールストレミング、一体どんな妖怪なんだろう――。
「――とりあえず、そこに殺生石は置いてないんだね?」
「それどころか、まだまだ妾のヤバいと思ったものが封じたままにしてある」
「ちょ、ちょっと、それいいの!? 九尾の狐に片っ端から封印を解かれて、大変なことにならない?」
「――まあ、屋敷は大変なことになりそうだが、今元しもべを送って奴に遭遇させるのもよろしくないだろう。本当に、全員出るように言ったのだろうな?」
「はい。わたくしも、無駄に命を犠牲にするのは望みませんからね」
「さて、奴が手間取っている間に、いかにして止めるかを考えねばな」
「お雑煮食べてただけじゃないか――?」
「くっくっく、妾を舐めるなよ。あれでも、策はずっと考えていた」
「っ! 流石呉葉!」
「餅をのどに詰まらせたときに、全部吹き飛んだがな!」
「まるで駄目じゃん!?」
――きっと、九尾の狐はシュールストレミングとか言う妖怪以上に恐ろしいだろうに。
こんなことで、僕達は大妖狐を退けられるのだろうか?




