《第百二十話》『日常に潜む罠』
「ヴッ!?」
「呉葉!? 気をしっかり持って!」
「オ、オゴ、オゴッ、オゴ――――…………ん、ぶはっ!!」
僕が背中をドンドンと叩いてやると、呉葉は喉でつかえていたお餅がとれたのか、咳き込むかのように息をし始める。
「――っ、あ、危うく殺されるところだった……ッ! 流石静かなる殺し屋――」
「だからちゃんと噛み切って少しずつ飲みこむように言ったのに」
「伝説の鬼神が、お餅をのどに詰まらせ死んだとあれば、もはや笑いごとどころの話ではありませぬよ?」
「若くないんだから、いつまでもその時の気分のままじゃダメだよ?」
「ええい、貴様らうるさいぞ! 特に夜貴、年寄り扱いは地味に傷つくのだからな!?」
そうは言っても、冷静に考えれば1200歳のおばあちゃんだから仕方ない。もっとも、きっと食道や気管の能力も若いヒトの何十倍、何百倍は優れているのだろうが。
――むしろ、それでさえお餅がつまるって、どう言うことなの……?
「――じゃなくてね!?」
すっかりお正月の朝食ムードになっていたが、そんなことをしている場合じゃない。
「狙われてるっていう殺生石はどうしたんだよ!? 今はそれを奪いに来るヒト達の対策を考えなきゃならないんじゃないの!? やっぱり、平和維持継続室から応援を――」
「だから、心配する必要はないと言っているだろう。だろう? 零坐」
「よもや殺生石をあちらに隠しているとは、わたくしも思っておりませんでしたわい――」
「いやいや、むしろ安全を考えればそこ以外にあるまいよ?」
「――そうすると、奴らは勝手に勘違いして探しに行ったことになりますね? ですが、あそこには確かに何かが封印されていたはず。あの封印は、いったい何なのですか?」
「うむ。その封印の下にあるのはだな――、」




