117/1022
《第百十六話》『新たなる脅威』
「皆の者。ついに、この時が来た」
蝋燭の炎が揺れる、木造の古式な建物。その見渡す限り広い一部屋の、一段高い御簾の向こう。そこに座する女性の影は、広間に集められた妖怪たちへと声をかける。
妖怪たちのその数は、部屋を埋め尽くすには到底足りない数である。だが、その誰もが頭を垂れ、女性に忠誠を誓っていた。
「あの憎き日陰者、狂鬼姫が所有する殺生石のありかが分かった」
おおっ――と言う声が上がる。すると、女性は満足げに微笑み、言葉を続ける。
「今やこの国には人間共が我が物顔で蔓延り、支配者を気取っている。しかし、それも殺生石を取り戻すことで終わりを告げる。何も知らぬ人間共が、余を、そして魔なるものを認識し、暗黒の太陽による夜明けが始まるのだ!」
女性は、御簾の向こうで立ち上がる。
「さあ行け、我が同胞達! この大妖狐・藤原 鳴狐の名のもとに! 傲慢な人間共を粛清し、新たなる時代をもたらせ!」
その言葉に、妖怪たちは立ち上がる。その様子を見て女性はほくそ笑み、九つの尻尾の影が揺れ踊った。




