《第百十四話》『隕石よりも重く強烈な一撃』
「こ、これ、お前きょ、狂鬼姫様に、ななな、なんと言う――あっ、これ待ちなさい!?」
「よ、よい――童子の言ったことだ、気にはせぬよ。ただ、だ、誰かに罵倒されたのは、随分久しぶり……」
「申し訳ございませんッ! お許しください、お許しください!」
「いやいや、怒ってはおらぬよ。怒っては。ただ、とてつもなぁく重たい伝説の右ストレートを喰らうとは――げふっ」
「吐血する程!?」
何気に、呉葉は自分の姿がやや子供っぽいことにコンプレックスを持っている。思いだすなァ。初めて顔を合わせた時につい口走ってしまって、心臓に杭を打ち込まれた吸血鬼みたいな顔してたっけ――。
「く、呉葉、呉葉は、そのままが、そのままがいいから。うん」
「ううっ、よたかぁ――……っ」
「ロリコンですか?」
「そういう意味で言ったんじゃないよ! ――と言うか、今のでまた呉葉がダメージを受けたじゃないですか!?」
「!? す、すみませんきょ、じゃない、呉葉様――ッ!」
「き、貴様ァ――突然クーデターとはいい度胸じゃないか……ッ」
「そ、そこまでは流石に大袈裟です呉葉様!?」
割とちょっとしたことですぐに怒る呉葉であるが、この話題に関しては容易くハートがブロークンして勢いが削がれてしまうらしい。本気で傷つくらしいので、普段はこの話題に触れないのだが。
「――あ、戻って来た」
零坐さんのお孫さんは、またたったたったと小走りでこちらへ寄ってきた。その姿はやはり、とても可愛らしい。
「むむ、これイヴ。呉葉様に謝罪を――」
「ちっさ」
「はぐわぁっ!!?」
「あ――」
とうとう精神が耐え切れなかったのか、呉葉は胸を押さえて倒れてしまった。
嗚呼――鬼神とまで謳われた呉葉が、狂鬼姫と言う異名で呼ばれまでした呉葉が、幼女に言葉で陥落させられるなんて……。




