《第百九話》『映画のチケット』
「夜貴、映画を見に行こう」
「ど、どうしたの突然――?」
呉葉はスマートフォンの画面をこちらに見せながらそう言った。画面には、某新作宇宙戦争映画の新作の案内がある。
「実はご近所さんからもらった、1○9シネマズの割引券があってだな。期限も近いし、使ってやろうと思ってな」
「なるほどね。しかし、映画館かぁ――行くのは初めてだなぁ」
「映画館はいいぞぉ。――と言う妾も、初めてなのだがな」
「そっか、基本的に呉葉は外に出られなかったもんね」
戦うために訓練を受け続けていた僕、鬼神としての役目を全うしていた呉葉。お互いに、そんなところへと行くような機会などなかった。
「だが、アレか。互いにそうなのだから、そう言う事になるのだな」
「うん? 何?」
意味深な言い方をする呉葉に、僕は疑問を投げかける。すると、彼女が僕の耳元に口を近づけてくる。
――生温かな吐息で、僕の心拍数は少しだけ上がった。
そして、こう言う時に呉葉がやらかすことも僕は分かっている。
「は・じ・め・て♪」
「ただ映画見に行くだけだよね!?」
当たり前ですが、映画館での淫らな行為は禁止されています。




