《第十話》『愛は争いを退けられるのか?』
僕が働いているところは、「平和維持継続室」という、国家秘密機関だったりする。
ここで行うことは、この国に置いて警察や自衛隊などでは到底解決できず、そしてヒトの目に触れられてはならない危険事項の解決である。僕は、その中でも「対妖怪」を請け負っている。
ちなみに、ネロフィ先輩は僕と同じ対妖怪、狼山先輩は一般人が手の出せない大物人物、もしくは危険な極秘組織を相手にしている。
僕が呉葉と出会ったのも、そんな仕事上でのことだった。
当時の彼女は、「狂鬼姫」と呼ばれており、うちの組織からかなり危険に見られていた。特に何かしたわけではないが、大きな力を持ち、神のように崇拝する人間や妖怪もいたために、警戒されていたのである。
「ちゅ、駐禁とは、おのれ警官めぇ――っ! し、しかし、夜貴のお昼ご飯を作らぬわけにもいかぬし……! いや、一度車をしかるべき場所に留めてから――」
「く、呉葉――いいよ、僕のお昼は」
「だ、だが――!」
「そのかわり、その分夕食を! 呉葉のおいしい食事をお願い!」
しかし、長くなるために省略するが、そんな彼女もいろいろあって、標的から見逃してもらっている。僕と「結婚」という形をとっているのも、深く関係している。
しかし、僕はむしろそれを喜んで受け入れている。二つ名は物騒だったが、実際のところ彼女は話の分かる鬼なのだ。だったら、わざわざ争わなくてもいい。何より、僕は呉葉のことが好きだから。
「むぅ――分かった。夕食、楽しみにしていてくれ。何度も何度も、失敗するわけにはいかんからな!」
そう言って、呉葉はバタバタと事務所を出て行った。――慌てているためか、台無しになったお弁当は置いて行ってしまった。
「…………」
「おい、樹那佐。ちょっと寂しそうだな」
「あははっ、まあ、ね」
なんだかんだ複雑な過去はあっても、やはり呉葉は僕のお嫁さん。正直なところ、お弁当を忘れたことで、彼女が事務所に来てくれたこと自体は、けっこう嬉しかった。




