《第百六話》『600馬力V型6気筒DOHCツインターボ4WD』
「むふふふふ♪ 久々のデートだ」
「くれぐれも、安全運転で頼むよ?」
「当たり前だ。例え前回のように突然車が飛び出してこようとも、回避して見せようぞ!」
クリスマス――その日、一日僕自身を呉葉の好きにしていいと言うことになった。サンタと言う夢を守るためにプレゼントを使ったための苦肉の策であるが、何とかそのあたりは、ごまかせそうである。
「――で、どこへ行くの?」
「奴がうろついている可能性があるから、ちょっと遠くだな。大きめのレジャー施設だ」
「奴――?」
「気にすることはない。妾達の仲を邪魔するお邪魔虫なのだからな!」
「ふ、ふーん――?」
よく分からないながらも、修理から帰ってきた牙跳羅のハンドルを嬉しそうに握る呉葉に、僕は微笑んだ。もし喜んでくれなかったら、どうしようかと。
「さて、高速道路についたぞ。夜貴、準備はいいか?」
「――へ? ひぎゃんっ!?」
インターを過ぎ、これから道路に差し掛かったところで、僕はシートへと押し付けられた。車の、恐ろしいまでの加速力と共に。
「まっ、待って、待って呉葉ぁ!? こここ、高速道路だって、制限速度はあるんだよ!?」
「ぬははははっ! やはりこいつの加速は心地よいなァ!」




