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《第百四話》『サンタサタンサンタサタンサンタサタンサンタ』
「夜貴! クリスマスイヴだぞ!」
「えっ」
呉葉の突然の発言に、僕は困惑した。
「何を呆けた顔をしているのだ! サンタだ、サンタが今夜来るのだ! 煙突から家に侵入してくるどこからどう考えても事案モノなジジイのくせに、枕元へプレゼントを置いてクールに去っていくあの男が今年も来るのだぞ!」
「あ、あのねぇ、サンタは子供の元にしか来ないよ?」
「妾は特別だから、妾の元にも来るのだと、零坐が」
「――もしかして、呉葉は」
サンタが本当にいると思ってるの? と、僕は聞くことができなかった。
その、彼女の超☆純粋に揺れた赤い瞳を見てしまったから。
「今年は何なのだろうな! 明日が楽しみだな、夜貴!」
「う、うん――」
「~♪」
鼻歌交じりに台所へと食器を洗いに戻る呉葉の背中を見ながら、僕は内心冷や汗ダラダラだった。
だって、サンタのプレゼントなんて、僕は用意しているはず等なかったのだから。




