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《第百三話》『卑怯は神様が見ている』
妾も、正直なところこの町内会からは抜け出したいところだった。しかし、参加は義務である。集会所が家の隣にあるから、たとえ人目を忍んでいた場合であってもいいわけがしづらく。
――はっきり言って、帰りたいです。ええ。
「…………」
「ねー! それでねー! だからねー! やっぱりねー! あれはああしたほうがねー!」
「いひひ、いひっ、いーっひっひっひっひ!」
よし、帰ろう。今日の題目は大したことがなさそうなので、妾は変えることにした。適当に理由をつけて抜け出そう。
「うっ、急にお腹がアイタタタ、妾は帰らせてもらうぞー」
「樹那佐さんだいじょーぶ!? 大変、樹那佐さんが突発的なびょーきに!」
「家に戻ってゆっくり休めば治――」
「119番だ」
「えっ、は?」
「いひゃひゃひゃひゃっ、いぃーーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
「ま、待てそこまででは――電話かけるのやめろォ!」
妾の仮病作戦は、どうやらうまくいかなかったようだ。
――結局、妙に心配されて時間を食っただけで、早めに抜け出すことは出来なかった。ちくせう。




