《第百一話》『きのこ』
「――と言うことがあったんだよ」
僕は今日、事務所で狼山先輩の頭にマイタケが生えたことを呉葉に話した。エリンギが生えた時は大爆笑されたモノだが、突然そんな事されたこちらとしてはたまったモノじゃなかったり。
「一話またぎだから、読者は忘れておらぬか?」
「メタ話はおしまいだって! ――じゃなくて、一体何がどうなってキノコが生えてくるんだろうね」
「その思誓 遊とやら、キノコを生やす能力でも持っているのか?」
「いや、糸を操るんだけどね」
なお、遊ちゃんはあまり姿を見せない――と言うか、気配が存在しない上に、いつも狼山先輩のコートに隠れているために、呉葉は会ったことが無い。
仕事上では役に立つ特性らしいが、人と話すときとかはむしろ気が付かれなかったりしそう悲しいことになりそうだ。
「――まあ、悪戯の常習犯なのだろう? 技巧を凝らして何らかの手段をとっているのではないか?」
「糸を駆使してできそうではあるかもしれないけど――」
「大体、子供の悪戯なのだろう? かわいらしいではないか」
「自分がされたら大人げなく怒るじゃん――」
「何か言ったか?」
「いいえ!」
「ならば良し。さて、ずっとこうして話していたいところだが、妾はそろそろ町内会へと顔を出さねばならん」
「うん、行ってらっしゃい」
「帰ってきたら、お前の下のキノコも頂いてやるからな」
「下ネタも禁止! 早く行ってきなよ!」
「ハハハ、では、行ってくる。もし腹が減ったら、先に夕食を食べていてもよいからな。準備は終わっている」




