《第1004話》『力技』
呉葉が地面を殴りつけると、街が爆発するようにめくれ上がった。一回の衝撃が波のように広がり、地上に破壊をもたらしていく。
「また、無茶苦茶するのう――ッ!」
「これなら、そう容易く逃れられまい!」
そのために、鳴狐は空中に投げ出されてしまう。呉葉は、そんな九尾の狐めがけて跳躍。ロケットのように、鬼神が突っ込んでいく。
「まあ、いつもの通りと言えばいつもの通りなんじゃがのう!」
隣接した呉葉が放った拳。しかし鳴狐はそれを空中でひらりと回避、その背後に回ってしまう。まるで、風に舞う木の葉のように静かで、優美に。
「ちっ、空中浮遊とは卑怯な――ッ!」
対する呉葉は、空中を蹴り飛ばし鳴狐へと追いすがる。――何を足がかりにしたかと思えば、足の裏で瞬間的に鬼火の爆発を起こしたようだ。僕のさだめた物理法則に、力技で対抗していくのが何とも彼女らしい。
「貴様もヒトの事言えんじゃろうが――!」
「ゴチャゴチャ喧しい! 殴るぞ!」
片腕に妖気を纏わせ、鳴狐めがけてそれを振るう呉葉。だが――、
「――っ!」
一撃で山をも砕きかねないその一撃は、鳴狐をすかりとすり抜けた。
何故なら、それは九尾の狐の作り上げた幻影だったからだ。役目を終えた幻が、ぐにゃりと歪み、空気に溶けるようにして消えてしまう。
「「「「「「「「「やれるものならば、やってみるがよい!」」」」」」」」」
それと同時に出現する、九人の藤原 鳴狐。呉葉の周囲を取り囲む、一尾の狐の女性。彼女らは皆、宝剣を構え今にも斬りかからんとしている。
「ああ、今やってくれよう!」
だがそんなことはお構いなしと、呉葉は周囲に妖気を集め始める。
「その言葉、せいぜい後悔せぬようになァ!」
そして、それぞれを狙った熱線が合計九本走った。




