《第1003話》『第二幕の合図』
「ッッッ!!!」
大地を蹴って妾は飛び出し、鳴狐へと殴りかかる。
「どれ、一発くらい敢えて受け止めてやろうかのう!」
対する鳴狐は、宝剣を取り出した。構えからして、それを盾とし妾の拳を防ぐつもりなのだろう。わざわざ、躱さずに。
その余裕、尚更ぶち抜きたくなってきた!
「ハァッッ!!」
「!!!」
炸裂する拳。それを受け止める剣。まるでこれが本当の戦いが始まる合図だとでもいうかのように、双方が激突する。
力と力の衝突が、衝撃波を巻き起こした。
その波動は周囲にある家々を纏めてなぎ倒す。爆弾でも落とされたかのように、無人の街はめくれ上がり、粉々になって大地ごとめくれ、消し飛んでいく。
「デタラメ、な、力じゃのう――ッ!」
「妾を、誰だと思っている!」
だが、ヤツの防御をブチ抜くことは叶わず。やはり、真なる本気の鳴狐は、ちょっとやそっとでは崩れなさそうだ。
「言われぬでもわかっておる! 故に、返すぞ狂鬼姫ィッ!」
鳴狐の九つの尻尾、それらの先端が妾の方へと向けられる。妾は咄嗟に、その場から飛びのいた。
尻尾から、合計九本の熱線が照射された。
「妖力を込めた上で一点集中に凝縮した狐火じゃ! 当たっても責任はとらぬぞえ!」
大地を、バターに入れるナイフのように熱線が斬り裂く。妾を狙うだけでなく、逃げ道を潰すように九つのレーザーが縦横無尽に走っていた。
故に、妾は。
大地に着地すると同時に、地面を強かに殴りつけた。




