《第1002話》『更なる力』
呉葉には悪いが、もはや終わりだろう。辺り一帯が焼き尽くされ、濛々と粉塵をあげるその中に注目しながら、僕はそう思う。
藤原 鳴狐。白面金毛九尾の狐の娘。かの大妖狐はその性質から天狐となる事は出来なかったが、その尾に蓄えられた妖力は、それらの神通力を軽く凌駕する。
そして、娘たる彼女には、半分人間でありながらその力が受け継がれている。つまり、今の彼女は自身と九尾の狐の妖力を合わせた上で、それを何倍にも高めているのだ。
そんな妖力を、身体能力へと振り分ければ――先ほどの通り。素手と単純な狐火だけで、かの鬼神もこの通りだ。
世界は、終末へと――……、
……――? 何、コレ……?
「……――きだ」
粉塵の中、高まる力を僕は認識する。どうやら、彼女はこれだけ圧倒的な力を見せられてもなお、諦める気はないらしい。
だが、それでも。この力は? 普段の彼女の妖力とは違う、別の力の高まりは?
いったい――……、
「好き、だァあああああああああああああああああああああああああッッ!!」
!?
粉塵が、瞬間的に膨れ上がる力と共に爆発するかのように拡散する。
――――…………、
「フッ、フフフッ、余が踏み台とはのう。全くなんとも腹立たしい事じゃのう、この世界よ」
鳴狐?
「余は貴様の考えなぞ知らぬ。分からぬ。じゃが、あやつは真逆じゃ」
…………、
「貴様のために、狂鬼姫は戦う。本来認識得ない者のために戦うなど、狂気もいいところじゃが、あの馬鹿はそのつもりのようじゃ」
…………、
「世界の滅びは余にとっても忌避すべき事態じゃが――あの力で余を越えられぬならば、どの道滅ぶじゃろう。ならば、余はその最終試験の相手になってやる。それだけじゃ」




