表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼嫁! 呉葉さん!  作者: /黒
第一章
10/1022

《第九話》『鬼の目に涙は割としょっちゅう』

「せ、折角上出来だったのに――っ! にゅおお……ッ!」


 呉葉が作ってきたお弁当は、中見こそ散らかってはいなかったものの、内部で様々なおかずがミックスされてしまっていた。それを彼女は、高級ガラス細工でも落として割ったように跪いて頭を抱えている。


「呉葉ちん、元気出しなよ――」

「や、原因である先輩が言える言葉じゃないでしょ――呉葉、やっちゃったものはしょうがないんだから、元気出して。ね?」

「わ、妾ともあろう者が、怒りに我を忘れて大事なモノを投げだすなどぉ、うぬぬぅ――」


 あまりにショックが強かったらしく、呉葉はこちらの言葉が一切届かないようだった。

 彼女曰く「上出来」だったのだから、それもまた仕方ないのかもしれないが。

 昨日の夕食は肉が変な焼け方をしていたが、鬼の中でもエリートクラスと言える彼女は、以外にも向上心が高い。料理の腕は、日々進化している。

――そんな呉葉が作ってくれたお弁当。きっと、さぞおいしく仕上がっていただろう。食べられないのが残念だ。


「――決めた」

「――え?」


 ぽつりと、呉葉が言葉を漏らす。


「今日は、この事務所に居座り夜貴の昼ごはんを作るッッ!!」

「ごめんすごくいろいろ邪魔だよ!?」


 ここには一応簡易のキッチンはあるし、今更見られて困るものはないが、彼女のことだ。料理時間以外はきっと、僕の隣に居座り続けるつもりだろう。事務仕事も任務で外へ出るときもそれでは、気になって集中できない。


「――ん? そこにいるのは、樹那佐んところの鬼か?」


 そこへ、僕の一つ上の先輩、狼山ろうやま 駿也しゅんやが事務所に戻ってくる。黒のロングコートを着用しているヒトで、見た目はとてもクール。顔立ちも整っている。――ただ、性格に関しては普通の青年であるために、何とも言えない不思議な雰囲気のヒトだったりしている。……個人的には、その服装は漫画か何かだけにしておくべきだと思う。


「なんだ、何か用か? 妾は今、夜貴の昼ごはんのメニューを考えているところなのだ。邪魔しないでもらおう」

「いや、邪魔するつもりなんてねぇけどよ。――ただ、事務所のビルの前に留めてあるスポーツカー、アンタのか?」

「む? その通りだが、妾の愛車がどうかしたか?」

「いや、その、な――」

「な、なぜ言い淀む? そのような言い方で、なぜ妾の不安を煽るんだ――!」


「――言いづらいんだが……警官に、駐禁切られようとしてるぞ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ