EP4 出発と疑問そして・・・・
二日後・・・・・。
「準備は良いかい?」
「大丈夫よ!」
「問題無い」
フローネとアレスに問いかけると二人共に返事を返してよこす。ここは学園の外延部にある旅立ちの門。数人の門兵と通行証を確認する学園役員が、往来する人々に目を光らせていた。
「じゃあ出発しよう!」
「ちょっと待って。レナード先生は?」
いざ出発しようとしたその時、フローネが僕の襟首を掴んで制止し、僕は思わず息を詰まらせ荷物の重みも在り、その場につんのめり首が良い感じに絞まる。
「レ・・・レナード先生は学園事務局に寄ってから追いかけるそうだから・・・・は、離してくれないフローネさん?」
「あ・・・ごめんセリス苦しかった?」
辛うじて声を出す僕にフローネが慌てて手を離し、僕は首をさすりながらアレスの手を借り立ち上がる。
「大丈夫だけど。次からは気を付けてねフローネ」
「本当にごめんね。でもセリスも悪いんだからね?言ってくれないと判らないんだから」
心配気に僕の首を撫でながらも自分の正当性を訴えるフローネに僕とアレスは苦笑いを浮かべ、それを見ていた学園役員達もクスクスと笑いを堪えていた。
「そういえばフローネは馬に乗れたっけ?」
「うっ・・・・。そう言うセリスはどうなのよ?アレスは魔導騎士課だから判るけど」
気まずそうなフローネに対して僕は余裕の笑みを返し、アレスは更に不敵な笑みを浮かべる。
「僕は大丈夫。伊達に先生の調査に付き合って彼方此方を廻ってないよ。ほらね!」
学園役員の人に連れてきて貰った栗毛の馬に跨り、勝ち誇ってみせる。同じ様にアレスも青毛の馬に跨りドヤ顔を見せ付ける。
「それでフローネの馬は・・・・。もしかして・・・・?」
そこに居たのはやや小柄な馬?だった。それを見られフローネは顔を真っ赤にして俯き体をプルプル震わせていた。
「悪かったわね!高い所が苦手なのよ!でも馬鹿にしないでよねこの仔はお祖父様が生み出した魔導馬よ。そこらの馬と一緒にしないで!」
雄叫びの如く勝ち誇るフローネだったが僕達には何処か負け惜しみにも見え、微笑ましく思えた。
「まぁ良いじゃないかフローネにも弱点があったんだからさ。誰にでも在る事さ」
「・・・・そうだね。でも魔導馬の方が持久力も在る荷物も多く持てるから助かるよ、フローネ」
僕は何とかフローネの機嫌を取ろうとするが、アレスは何の慰めにもなっていない身も蓋も無い事を洩らしてしまう。
「うるさい!さっさと行くわよポリー!」
自分の馬に拍車をかけ歩き始めるフローネに僕はタメ息を吐きながら、アレスは肩を竦めて同じ様に拍車を入れる。
「お姫様にも困ったものだ・・・・」
「いやアレス。あれは無いと思うよ」
「そうか?」と呟くアレスに僕は再びタメ息を吐くがこの二人は何時もこうなので、「後でご機嫌を取り直さないとな」と思う僕だったが、不意にアレスが前方に止まっている馬車に目を向け険しい顔をしているのに気付き、馬を寄せ声を掛ける。
「どうかしたの?」
アレスは険しい表情のまま無言で馬を歩かせ、門を出ると漸く表情を緩め言葉を発した。
「今の馬車の紋章・・・・・」
「紋章がどうかしたの?」
すれ違った時に見た紋章を思い出してみるが、中々思い出せず首を捻っている僕にアレスが一言。
「翼を広げた竜の下にある交差した二本のマジックワンド・・・・。帝国三大貴族の一つ魔導を司っている”エルピス家”の紋章だ。何故こんな時期に・・・・・」
「数多くの宮廷魔導師を輩出しているあのエルピス家かい?」
アレスは「ああ・・・」と若干難しい顔で頷き、僕は魔導を学んでいる者からすればまさに雲の上の家柄の人物が何の用だろうか?そう思いながら馬を走らせるのだった。