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EP2 恩師と治療とそして・・・・

「ここって・・・・・資料室?」


どの位時間がすぎたのかもわからず、辺りを見回すとそこはよく見慣れた術史の資料室。そして視線の先にはこれもまた見慣れた人の姿があった。


「お目覚めか?セリス君」

「レナード先生・・・・・」


少し古ぼけた白衣を纏った術史課担当教師のレナード・ファインケル先生が僕に向けて呆れた様な視線を向けている。


「いつもの事だが彼等もよくやるね。飽きないんだろうか?」


椅子から立ち上がりつつ手に持ったペンをクルクルと回しながらやって来る先生に、相変わらずだなと場違いな思いもあったが、この先生は良くも悪くもマイペースなのを思い出し苦笑いを浮かべる僕に先生の嗜める様な言葉が飛んできた。


「人事の様な顔をするんじゃないよ。君は被害者なんだぞ」

「仕方がないじゃないですか。彼等には二人を護ると言う大義名分があるし、僕が術史を専攻している落ちこぼれなのは事実ですからね・・・・・」

「ほう?それでは君に術史を教えている私も落ちこぼれって言う事になるな・・・・。面白いな、君を痛めつけた連中の中に僕以上の家柄の人間がいたかな?」


それはあり得ないだろう。レナード先生は帝国三大貴族の一つ政務を司るファインケル家の出身だ。それも現宰相の実弟、さらに奥方は軍務を司るリヴァース家の末娘。この先生を超える家柄など帝室ぐらいしかない。


「まあ・・・良い。痛む所はないか?君に治療術式をかけ続けているおかげで、この術式だけはかなりの習熟してきたつもりだが?」


僕は改めて体を見回すが特に痛む所も無く、火傷の痕も無い。目立った所に傷が無いのはあの連中の嫌らしい所だった。僕が大きな怪我や何かをすれば当然フローネとアレスは彼等を疑うし、二人の寵愛を得たい彼らからすればそれは得策じゃあない。


「まあ安心しろ。連中にはそれなりの報いを与えておいた。それで身の程を知ればいいんだがな」

「報い・・・。と、言いますと?」


僕の不思議そうな呟きに先生は冷笑を浮かべ「すぐに分かる」とだけ言うと、傍らに置いてあった机から数枚の紙を僕に手渡した。


「?・・・・先生!これって・・・!」


それは僕が以前から申請していた在る遺跡の調査許可書だった。帝室に関する遺跡の為に中々許可が下りず、半ば諦めていたもので。僕の驚愕の表情に満足したのか、笑顔を浮かべた先生の顔が印象的だった。


「兄上に少々強引にお願いしていたものさ。既に大規模な調査が終了していた事もあって何とか許可が下りた。但し、人員が少数に限定されたのは痛かったがね」


そう言われ参加人員の名簿に目を通すとその先生の言葉通り、調査の参加人員は5人に限定されておりそこには僕と先生と先生の奥方の名前と、更にフローネとアレスの名前が記入されていた。


「勝手だがあの二人にも承諾は貰って置いたよ。両名とも稀有な実力を持っているし、そこらの生徒よりも遥かに優秀だしね」


その言葉に先程先生が言った「報い」がどんな物なのかを知り愕然となる。


「先生もしかしてこの怪我の事をフローネ達に・・・・・?」

「ついでだったしね当然だろ。あの連中が最も嫌がる事をしなければ報いにならないし、連中にもいい薬だ」


随分と効きすぎる薬だと思う。フローネ達に知られれば、あの連中は学園の爪弾きになるのは目に見えているし、フローネの事だから学園長にも伝えるはず、もしくはアレスから父親であるエルド様にも伝えられる。つまりはお先真っ暗と言う事だ。


「えげつないですね。本当はあの二人に迷惑を掛けたくなかったんですけど」

「それは違うぞセリス君。彼等は迷惑などと思っていないだろうし、逆に頼ってほしかったんじゃないかな?確かにあの連中に怒りを覚えていたようだが、それにも増して自分達に隠し事をしていた事に怒っていたぞ」


あの二人らしいや。そう思いつつも、そんな話を聞きながらこの場に居ない二人の行方が気になり、先生に尋ねてみると。


「君が目をさましたらすぐに部屋に来るようにだとさ。まぁ説教は覚悟した方が良いと思うよ。相当怒っていたからね」


どこか他人事の様に話す先生に僅かに口を尖らせると、イイ笑顔を浮かべ「君にもいい薬だろ」とだけ呟き。サッサと行けとばかりに手を振った為に僕は何も言えず資料室を後にした。


「効きすぎる薬は毒にもなるって言うけど本当だね・・・・・」


先程までは自業自得だと思っていたあの連中に対して沸いた、僅かな同情心が口から漏れていた。

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