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小っさいおっさん  作者: はじめの一歩
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両親の事

うちには、父親がいない。


なんでも、俺が5歳くらいの時に交通事故で亡くなった。

見通しの比較的いい道路だったから、

自殺だったんじゃないかとも聞いた。

当時の俺には理解出来なかった。


それを5歳の子供の前で話していた大人達の事今でも到底理解できそうにないが。


あまりよく覚えていないが、とにかく必死に頑張る人だったんだと思う。


その所為であまり家には帰らなかったのだと思う。

たまの休みの日は、みんなで出かけた覚えもある。

楽しかったと思う。


それでも、父さんといた時間は圧倒的に少なかった。


だからだろうか。

あまり悲しい思いはしなかった気がする


その日から、母さんが働くようになった。


小学校の入学式の時の写真が、うちにはない。

同様に、中学校の入学式も。


母さんは忙しかったから。

寂しくはなかった。

母さんは、忙しくても、愚痴は言わない人だったし、イライラして、俺に当たる事も全くなかった。


中学に入り、

家事を少しずつ受け持つようになった今、やっと「母さん、大変だったんだな」と思うようになった。


家事をし始めた最初の頃は母さんの3倍は時間がかかっていた。

母さんは根気強く待って、一つ一つ丁寧に家事の仕方を教えてくれた。

その頃は徹夜もしばしば…


3年も続けていれば、少しは板に着くものだ。

もうほとんどはこなせるようになった。


「あんたも今年は受験生なんだし、家のことは無理しないでいいからね」


少し困ったような顔で、最近そんな事を言われた。

もう、癖になってしまえば無理も何もない。

部活にも入っていなかったので、時間はある。

それに勉強も嫌いじゃないし、そこそこは点数取れてるし。

そこまで話して、やっと母さんは安心した顔になった。


こんな感じで、平凡に日々を過ごせればいい。


そう思っていた所にこのおっさん。


あの日の肉じゃがを、どこからもって来たのか、ちっちゃい箸で突っつくおっさん。

いきなり声と表情がかわったおっさん。

何かと心臓に悪い言動をするおっさん。


何なのかさっぱり分からない。


平凡な日常に小さな刺激が加わった。

これも慣れてしまえば慣れるものなのだろう。


今日もまた、コースターを座布団がわりに梅昆布茶をがぶ飲みするおっさん。


…梅昆布茶って、そんな美味しいか?













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