3/15
プリントの日【 2 】
忘れた。あーあ。
困った。今の授業は平川先生。
数学だが、忘れ物には特に厳しい。
生徒指導だし…
考えながら机を見るが、当然答えが書かれてるはずもなく。
黒板にも、問題すら書かれていない。
…隣に、見してもらおう。
「ゴメン見せ……」
言おうとしたときだった。
「x=3、y=2」
え……。
「…そうだな。正解だ。」
小さく、聞いてたのか…と残念そうにつぶやく先生を俺は呆然と見ていた。
え、今の…俺じゃ…
しかし、答えた声は自分が一番よく知っている。自分の声。
無意識? ありえん。
…怖っわ…!
と思ったその時、
「『怖っわ』とか思いましたぁ?」
それはそれは小さな声だったが、
動揺して過敏になっている鼓膜を揺らすには
十分な物だった。